平たい小石と少年

「姉々、これちょっと持ってて。」青いシマゾーリに半スボンの少年が、小さな手を出した。
平たい小石ばかりを私の手のひらに置くと、また彼は砂浜に走っていった。
「こんな石ころ、どうすんの?」そんな事を思いながら、また何か探している少年を見つめていた。
しばらくすると無邪気な笑顔で大きく手を振って「こっちへ来て」と手招きしたので、仕方なく両手を胸のあたりに広げたまま、内心「めんどくさいな」と思いながら歩きにくい砂浜を抜けて波打ち際までたどり着いた。
少年の手のひらには違う大きさの、これまた平たい石があふれそうに乗っていた。
平たい小石と少年
「姉々、見とってよ〜、うりよう〜」そう言って少年は右斜め前にかがんだ。
<うそ!まさか。この石、投げるんか?こんなに夕日が奇麗に映った海に…信じられん。こいつ。情緒無いヤツ!やめれ〜ちょっと待て〜>
そう思った私の声など届くはずもない少年は「シュッ!」っと声を出しがら右手の小石を黄金の道めがけて思いっきり投げ放った。
チャッ、チャッ、チャポン…
平たい小石は大きな弧を描いて水面を二回だけ跳ねてから沈んだ…
<うそっ!…さっきまで真っすぐ伸びていた黄金の道で大きくハネた水しぶきに夕日が映ってキラキラと海面に散った…。うわっ!何コレ!奇麗じゃん〜すごいじゃん〜コイツやるじゃん〜
。>

「げーっ!2回か〜、3回に挑戦してるんだけどさ〜。全然、出来ない!」
少年は悔しがってまた、右斜め前かがみになった。
チャッ、チャッ、チャポン。
小石がしぶきを立てた。キラキラと黄金の道が揺れ続けた…
「は〜また2回か〜」少年の声がだんだん小さく聞こえてきた。
まるで、光に包まれているような感覚だな…なんて奇麗なトコロなのだろうココは。


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この記事へのコメント
情景を飾るのも自然な成り立ちですね。
子供は美化した事なんか考えて無く、ただ夢中になってるでけ…
そんな心は大人になると 意識的に呼び覚ますんですよ。
僕はこの景色を前にすると、思い出を洗う事を考えたりするかもしれません。
その力になる景色ですね。
Posted by ぶる★ at 2006年10月15日 15:02
>ぶる★さん
お久しぶりです。
blogお休み中に宜野湾の海で撮った写真ですよ。とても奇麗な夕日でした。
記事の内容は完全にフィクションですが…ぶる★さんの言うように、子供の頃は何事にも夢中になれた気がします。
でも、大人になっても出来ないことはないですよね。
奇麗なものを見て、奇麗だ…って感じられるうちは、まだまだイケます。笑
Posted by reeka at 2006年10月15日 16:55
こんばんは。

こういう少年は、丸刈りで頭に十円ハゲがあったりすると、私は絵的に美しさを感じるかもしれません(時代が古いか・・・)。青ッパナでもよいし、咳きこむ少年でもOK。

(若)
Posted by 若だんな at 2006年10月15日 20:39
>若だんなさん
あはは。若だんなさんのイメージする少年像…って。
昭和の時代の少年って感じですね…白いランニングシャツに膝丈のズボン、よごれたヒザ小僧…なかなか良いです。笑
Posted by reeka at 2006年10月15日 21:30
私も今日海そばでとても似た写真を撮りました☆細かい波の刻みと大きな波の揺れが☆★キラキラとても綺麗でした。
Posted by gby at 2006年10月16日 00:56
>ルイちゃん…ですよね…
海そば〜!最近、行ってないな〜!行きたいのは山々なのだけど…
絶対、近いうち行ってやる〜! おいしかった〜?
海そばから見る夕日。奇麗よね! 私もあの海すき…切ないくらい好きさ〜
Posted by reeka at 2006年10月17日 01:23
 
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